パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

銀座ネオンパラダイス

銀座ネオンパラダイス (KARENコミックス)

銀座ネオンパラダイス (KARENコミックス)

呉服問屋の放蕩息子・鷹彦と、下請けの縫製工場の息子・葵。
子どもの頃から玩具同然に鷹彦に振り回されてきた葵だが、徴兵から帰ってこない鷹彦のことをずっと待ち続けていた。終戦から三年後、変わらないにやけ顔で姿を現した鷹彦を葵は思わず殴りつけてしまう。
堅物の葵と、ろくでなしの鷹彦。正反対でありながら、だからこそ自分にはない相手の一面に惹かれあってきたふたり。ふだんは色恋なんて興味ないって顔をしている葵のほうが、いざとなればすごい口説き文句を吐いてみせるところがいい。こんなにまっすぐぶつかってこられたら、のらりくらりの鷹彦だって嘘はつけないだろう。本人は自覚ないみたいだけど、鷹彦の男を上げてるのはまちがいなく葵だよな。
何もなかった戦後の動乱期。それは厳しい時代だったにちがいないが、互いの存在を頼りに、まっすぐ突き進むふたりを見ていると、なにかがはじまる予感にも満ちた時代だったのだろうと思えた。