パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

朱黒の仁 1-2

朱黒の仁  壱 (Nemuki+コミックス)

朱黒の仁 壱 (Nemuki+コミックス)

朱黒の仁  弐 (Nemuki+コミックス)

朱黒の仁 弐 (Nemuki+コミックス)

牙を抜かれて生きながらえるより、武士として名を刻むべく散ることを選んだ真田幸村。その苛烈な死に様を描く。
槇さんの墨絵のような味わいある作画は、つくづく時代ものにぴったりハマる。デジタルならではのエフェクトで、こんなにアナログっぽい雰囲気が出せるってすごいなあ。キャラクターデザインも、ほどよく当世風にアレンジされていて格好いい。
小学生時代、学習まんがで真田親子の最期を読み、「なんてかわいそうなんだ…」とショックを受けたことを覚えている。なので、いまも真田幸村といえば「忠臣」で「最後の戦国武将」のイメージ。
圧倒的不利の状況下、それでも豊臣の家臣として抗いつづけた幸村が追い求めたものはなんだったのか。この漫画をよんでいると、幸村に明確な勝算があったわけではなく、死を持ってなにかを後生へと刻もうとしていたかのように思える。だから、「生き様」ではなく「死に様」なんですね。いかに生きるかより、いかに死ぬかをもってその生を証明しようとしたのが、武士というものだったのかもしれない。
度重なる掲載誌の廃刊にも関わらず、生き延びてきたらしい本作。こんどこそ幸村の「死に様」にたどりつけることを祈って。