パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

犬と欠け月

犬と欠け月 (マーブルコミックス)

犬と欠け月 (マーブルコミックス)

タイトル目前に網膜剥離になり、第一戦を退いた元ボクサーの一弥。いまはスポーツバーを営む傍ら、期待のルーキー・岳のコーチをしている。夢も情熱ももはや消えてしまったと思っていた一弥だったが、愚直なまでに従順な岳の面倒をみるうち、自分がまだ何もあきらめきれていないことを思い知らされていく。
もう絶対に手が届かないとわかっている夢の隣で生きていくのは、きっと楽しいことばかりじゃなくて、もしかしたら辛いことのほうが多いかもしれないけれど、岳も一弥もそうして身を削っていなけりゃ「生きてる」って感じられない人間なんだろう。
失ったものが大きすぎて、本気になることに臆病になっていた大人が、失うものなど何もない子どものがむしゃらさに触れて、もういちど前を向く。最初はからかい半分でものわかりのいい大人のふりしていた一弥が、岳に触発されてどんどん必死になっていく姿にときめいた。
地位もプライドも高い余裕のある大人の男はかっこういいけど、私はやっぱり、そのプライドを突き崩したくなってしまうんだよな〜。余裕なんてどっかに放っぽって、我を忘れてる姿にこそ萌えるのだ。