パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

よなきうどん

よなきうどん (ジュネコミックス)

よなきうどん (ジュネコミックス)

よなきそばじゃなくて、よなきうどん…?このタイトルだけで、ちょっと不思議な坂田ワールドに引き込まれてしまう。
マヌケなゲイの魔王や、嫉妬にかられたナメクジの復讐劇、少女が通学路でちいさな春を満喫する掌編まで、ユーモアと奇想にあふれた短編集。Juneに掲載された作品が中心なので、BL風のお話もけっこうあります。
大正か昭和初期の学生ふたりが夏の昼下がりに軒先で涼んでいるのを描いた「へちま棚」なんて、とりたてて何が起こるわけでもない話だというのに、なーんかいいんですよね。他愛のないやりとりから、ふたりの為人が浮かび上がってくるよう。
この軽妙な掛け合いと心地いい空気こそが、坂田さんの持ち味な気がします。