エイス 1-3
- 作者: 伊図透
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偽装と盗聴を繰り返す悪徳シロアリ駆除業者の峠軌八。他人の不幸を嗤うことでクソな毎日をやりすごしていたある日、彼の盗聴技術を買いたいとデュアと名乗る金髪美女が声をかけてくる。彼女たちTGAスカラシップの目的は、既存の社会システムのなかでは窒息してしまう天才的人材を、世界規模で発掘し支援すること。どんな鮮やかな色も、いたずらに時を踏み続ければ濁ってしまう。だから、きらめきを失わないうちに、その人生に点をうつ。
純粋すぎるほど純粋な彼女たちの理想は、やがて個人にとどまらず国家規模の求心力を得て、世界を革新していくかに思われた。しかし、あまりに強大になったTGAは、各国の諜報機関から狙われることとなる。
文字通り世界をまたにかけた壮大な物語だったけど、描きたいことは、大きな虹のふもとでなんども打ちのめされながら立ち上がる名もなき者たちの命のかがやきだったんじゃないかと思う。
きらめく才能を持ちながら、生まれついた環境によって困難を余儀なくされるたくさんの人びと。その不条理を解決するすべを、いまだ私たちは持ち合わせていない。TGAが築いた理想郷すらも、デュアやリュウをほんとうに救うことはできなかった。世界を変えるなんてことは、ひとの力にはあまる夢なのだろう。それでも、目の前で泣いている愛する人の涙をぬぐうことならできる。
ひとは無力で、同時に驚くほど強い。ド底辺のクズ野郎だった峠が、ヒロインのために命を賭けるヒーローになる姿を見ていると、そう思わされた。