アケミちゃん
攻めがガチのクズすぎて、なかなか己の倫理観とのせめぎ合いに折り合いがつかなかったのだけど、母ちゃんがばっさり云ってくれたおかげでいくぶん溜飲が下がった。
罪は悔い改め、償われるべきものであると思う反面、感情のうえではなかなかゆるすことができない自分がいることを実感させられたなぁ。
悪事に手を染めてしまったとき、その事実と真正面から向き合える人間はすくない。
自分と罪そのものを切り離すことができないからだ。アケミのように自分を責める者、蒼介のように「なんで自分ばかりが」と罪から逃避しようとする者。かたちは違えど、ふたりとも過去の過ちにとらわれてもがいている。
すべての人間が正しく生きられるわけなじゃない。間違って、蔑まれて、それでもゴミクズみたいな自分を引きずりながら、生きていく。
自分自身ですらゆるせない蒼介の罪にゆるしを与えた深夜のキスシーンの、場末のバーには似つかわしくないほどの静謐さ。どんなクズ野郎だとしても、アケミが自分で自分にかけた枷を外すには、蒼介のずうずうしいほどのあきらめの悪さが必要だったんだろうな。
そう思えば、たとえ世界中から顧みられなくとも、完璧な恋人同士だ。