あさのあつこが描くピッチャーとキャッチャーのあいだには、言葉にはしがたいつながりがあるように思える。
彼らはボールを介して、言葉以上に語り合う。
勝ち負けだけじゃない。楽しむためだけでもない。うまく言葉にならない感情をボールにこめて放り、それを懸命にうけとめようとする。
ときにはじいてこぼしてしまったり、まったくあさっての方向にとんでいったりすることもある。それでも、キャッチャーはピッチャーを信じてミットを構える。ピッチャーはそのミットめがけて全力で投げ込む。
言葉は多すぎる。言葉じゃ足りない。わけもなく焦燥に駆られていた日々を思い出した。