パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

グラウンドの空

 

 

グラウンドの空 (角川文庫)

グラウンドの空 (角川文庫)

 

あさのあつこが描くピッチャーとキャッチャーのあいだには、言葉にはしがたいつながりがあるように思える。

彼らはボールを介して、言葉以上に語り合う。

勝ち負けだけじゃない。楽しむためだけでもない。うまく言葉にならない感情をボールにこめて放り、それを懸命にうけとめようとする。

ときにはじいてこぼしてしまったり、まったくあさっての方向にとんでいったりすることもある。それでも、キャッチャーはピッチャーを信じてミットを構える。ピッチャーはそのミットめがけて全力で投げ込む。

言葉は多すぎる。言葉じゃ足りない。わけもなく焦燥に駆られていた日々を思い出した。