パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

幽霊狩り

幽霊狩り~ヘル・オア・ハイウォーター1~ (モノクローム・ロマンス文庫)

幽霊狩り~ヘル・オア・ハイウォーター1~ (モノクローム・ロマンス文庫)

2016年の読み初めはモノクローム・ロマンス新シリーズ。
ミステリーが主題にありながらも叙情的でCPの左右も固定されていたA・Eシリーズが、日本のBL読者にとってちょうどいい「M/M入門編」だったのに対して、こちらはさらにM/Mの世界へ踏み込んだ内容になっている。
元FBIと元海軍特殊部隊所属というハードボイルドな出自を持つ男たち。つねに誰かに狙われ、命の危険ととなり合わせのスリルとバイオレンスに満ちた世界観。そして、ときには奪い、ときには奪われる、あくまで対等なプロフェットとトムの関係。そう、このシリーズのふたりは、リバーシブルなのです。
ここがBLとM/Mのいちばん大きな違いでしょう。あちらではリバが主流の様子なので。
文章のリズムも翻訳独特の言い回しが多くて、なれるまでに時間がかかった。それでも、読み進むうちに、BLとはひと味ちがうふたりのバディ関係に引き込まれていった。
トムもプロフェットも互いに惹かれあいながら、けして相手の思いどおりになることを良しとしない。すこしで自分が「優位」に立とうと火花を散らし合う。つねに強烈な支配欲と征服欲をぶつけ合い、顔を合わせれば喧嘩しているふたりの間に、ふと訪れるおだやかな時間にドキリとさせられた。
傷だらけのふたりの男の人生をより合わせていくような重厚な物語は、まだ幕を開けたばかり。続刊が楽しみだ。