昭和元禄落語心中 4-7
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菊比古自身は、ただ一途に己の芸道を極めようとしているだけ。しかし、その浮世離れしたストイックさゆえに、欲にまみれて生きる世俗の人間にとっては彼が「自分には手が届かない」存在のように思える。
みよ吉は芸のために自分を捨てた菊比古を恨み、助六は日ごろの悪行が祟ってついに破門を言い渡される。愛した者たちが彼のもとを去り、孤独が深まるほどに、菊比古の芸は磨かれていくというこの皮肉。
落語のために生き、落語とともに死ぬことをさだめられたかのような八雲師匠のもとに、「落語のために落語をやる」と言い切る弟子がやってきたのもまた、運命なのかもしれないな。