パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

同人誌2冊

サンクチュアリ「Arthur In The Dark」
電子購入した米英再録。このサークルさんの「この素晴らしい愛をもう一度」で、同人の底力を思い知らされたわけですが、こちらもまたすんばらしい…!2冊描く間に、画力がめちゃくちゃ上がってるのがわかるのも、ファンとしては楽しい。描き続けるってつくづくすごいことだ。
ある朝突然、目が見えなくなっていたアーサー。会議に来ないアーサーを迎えにきたアルはアーサーが失明したことを知り、彼の目となって生活の面倒をみることにするが、だんだんと押し隠していた劣情を抑えきれなくなっていく。
はじまりこそ、アルが盲目のアーサーを監禁する話?と安直に萌えていたのだが、物語はめくるめく展開を経て彼らの出会い、そして決別へと遡っていく。アルは出会ったころから何も変わらないように思えるアーサーにも、自分が知らない過去があることを知り、アーサーはずっと手のかかる子どもだと思っていたアルが、すっかり大人になっていたことに気づく。
ただのほれたはれたじゃなくて、根底にずっと「親子」があるふたりの関係性がすごくいい。変わっていくことのまぶしさとせつなさに、胸をしめつけられた。
民意の器としての「国」である自分と、まるで人間のようにたったひとりに恋い焦がれる「私人」としての自分。異なるふたつをひとつの身体におさめた彼らの恋の困難を、「人名」と「国名」ふたつの人格に分けて描き出した構成力は見事のひとこと。こういう漫画を読めるから、ヘタリアはやめられません。