アケミちゃん
攻めがガチのクズすぎて、なかなか己の倫理観とのせめぎ合いに折り合いがつかなかったのだけど、母ちゃんがばっさり云ってくれたおかげでいくぶん溜飲が下がった。
罪は悔い改め、償われるべきものであると思う反面、感情のうえではなかなかゆるすことができない自分がいることを実感させられたなぁ。
悪事に手を染めてしまったとき、その事実と真正面から向き合える人間はすくない。
自分と罪そのものを切り離すことができないからだ。アケミのように自分を責める者、蒼介のように「なんで自分ばかりが」と罪から逃避しようとする者。かたちは違えど、ふたりとも過去の過ちにとらわれてもがいている。
すべての人間が正しく生きられるわけなじゃない。間違って、蔑まれて、それでもゴミクズみたいな自分を引きずりながら、生きていく。
自分自身ですらゆるせない蒼介の罪にゆるしを与えた深夜のキスシーンの、場末のバーには似つかわしくないほどの静謐さ。どんなクズ野郎だとしても、アケミが自分で自分にかけた枷を外すには、蒼介のずうずうしいほどのあきらめの悪さが必要だったんだろうな。
そう思えば、たとえ世界中から顧みられなくとも、完璧な恋人同士だ。
大奥 10-13
どんな貴い志も、ひとの底知れぬ欲望のまえでは、路傍の花のようにたやすく踏みにじられていく。
この漫画が描こうとしているのは、人間の人生よりもさらに長大な「時代」や「歴史」といったものであるような気すらしてくる。たったひとりの人間になしうることはほとんどなく、幾多の意志と願いが重なりあい、機を得てようやくかたちを成す。
そう考えると、人生というもののはいったいどこまでつづいているのでしょうね。
この漫画を読んでいると、人間の計り知れぬ気高さと罪深さに、震える心地がします。
初恋大パニック
引きこもりから一転、デビュー作で大ヒットを記録した注目の新人作家・藤原壮介の担当となった敏腕編集の小宮山旭。打ち合わせ初日、良家に生まれ、容姿にも才能にも恵まれたぽっと出の新人に対して、やっかみまじりにこぼした悪態を、藤原本人に聞かれてしまう。
お互いの第一印象は最悪。でも、くやしいが藤原の才能はほんもの。
編集者として、作家生命にかかわる第二作目をよりよいものにするべく旭は奮闘するのだが、旭が自分をバカにしていると思い込んだ藤原は、まったく旭に心を開こうとしない。
いけすかないと思っていたはずの相手なのに、出会うたびにイメージとは異なる互いの素顔を知り、やがて惹かれあっていく。
ハリウッドのラブコメ映画のような明るくハッピーなお話で、とても楽しかった!
打ち合わせでの何気ないやりとりからときめきが生まれていく丁寧な描写は、月村さんの小説ならではですね。
ほんとうは恋愛経験すらないくせに、無理して大人の男を装う小宮山さんがおかしいやらかわいいやら。藤原くんともども翻弄されっぱなしでした。
来たる晴れかけの明日よ
廃品回収店のイケメン従業員×お人好し店主。
このカップリングはちょっと、「くいもの処明楽」を彷彿とさせるな~。デキる年下攻めっていいですね。
上田さんにはオヤジ受け属性がある気がして、期待している。
同人誌セレクション ヤマオリ
同人誌セレクション ヤマオリ (The best best)
- 作者: ヤマオリ
- 出版社/メーカー: ソフトライン 東京漫画社
- 発売日: 2016/06/27
- メディア: コミック
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大好きな火黒作家さんの薄い本セレクション。
再販の見込みのない本ばかりまとめてくれたので、すごくありがたい…。
卒業後の火黒はどれだけ想像しても妄想が尽きなくて、ほんとうに何通りでも楽しみたい。かがみくんは言葉より先に手が出るタイプだし、くろこさんは思ってもなかなか口には出さないので、やることやっておいてなお両片想いなふたりがたまらない。
もだもだしっぱなしの恋模様、ごちそうさまでした!
ジェイミー・バーディー
ジェイミー・ヴァーディー : 英国一の成り上がりストライカー
- 作者: フランク・ウォーロール,タカ大丸
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2016/06/30
- メディア: 単行本
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岡崎選手と同じチームに所属する、成り上がりプレミアリーガーの伝記。
ルールやテクニックにはまるで疎く、個性的な選手たちが持つ「物語」に惹かれてサッカーを観ているだけの永遠のにわかなので、この本もそうした「物語」を楽しむために手に取った。
でも、どちらかといえば、工場労働者から一部リーグのエースストライカーへとのし上がる波乱万丈のドキュメンタリーというより、彼の偉業を詳細な数字でたどるクロニクルだったかな。競技そのものにさほど興味のない私には、ちと硬すぎた。
心を殺す方法 1-2
きみがほしい、きみがほしい
街の片隅のちいさなカフェで、ひっそりと穏やかに暮らす駆け落ちカップルのセンシティブラブストーリー。
まるで夫婦みたいなのに、いつまでもお互いに片想いしてるみたいな、ひとさじの淋しさをひそませた幸福な日常に癒されました。
ふたりだけしか知らない
いつも女の子に囲まれているモテ男の冬弥と、ツンデレ眼鏡の陸上部員・圭介。
学校ではまるで接点のないふたりだけど、じつはお互いの身体で欲望を解消し合う仲。女扱いされるのが一番嫌いな圭介なのに、冬弥に触れられるとつい絆されて、流されてしまう。
奥手で意地っ張りな圭介が、マイペースでちょっと強引な冬弥に振り回されているようにも見えるが、飄々としている冬弥も、女子が苦手な圭介に付け入るように関係を持ったことに不安を抱えている。
いっしょにいてもべつべつに好きなことをやっている姿は、恋人同士というよりも男友だちの距離感。あまりの気軽さに最初は、若気の至りみたいな関係?とも思ったけど、そういう気のないそぶりこそが、「余裕のない自分」を見せたくないがゆえの本気の裏返しでもある。そうわかってからは、そっけない態度のなかにも独占欲や嫉妬が透けて見えてにやにやしっぱなし。
まだうまく恋人をあまやかす方法なんて知るはずもなく、想いをぶつけ合うしかない未熟で不器用な恋模様にこっちまできゅんとさせられる一冊。
宇宙でいちばん君が好き
家族で農業を営む稔の前に、突如現れたふしぎな少年。
宙(そら)と名乗る彼は、遠い星から結婚相手を探しにやってきたという。突拍子もない話に困惑する稔だが、宙から「嫁」認定され、ともに暮らすことになる。
かわいい絵柄でかわいいお話。稔はなんだかんだツッコミつつも、流されるがままのラノベ主人公みたいなキャラなので、ドラマチックな設定のわりになんとな~くくっついた感じになってしまったのが惜しい。