最果てにサーカス 1

最果てにサーカス 1 (ビッグコミックススペシャル)

小林秀雄と中原中也の無名時代をフィクションを交えて描く、月子さんの新境地。
「文豪ストレイドッグ」といい「月に吠えらんねえ」といい、趣向はさまざまながら文豪パロが流行っているんでしょうか？
作家をめざしてはいるものの、自分の才能に限界を感じている帝大生の小林秀雄。友人が連れてきた18歳の天才詩人・中原中也は、くすぶっていた彼の人生をあざやかに塗り替えてしまった。世間知らずで無鉄砲な子どもでしかない中也が放つ、本物の魂の輝き。小林は奔放な中也に振り回されながらも、彼の自由な言葉に焦がれ、同時にその圧倒的な才能に打ちのめされていく。
小林秀雄といえば、誰もが国語の教科書で読んだことのある近代評論の祖。とても理知的なイメージを抱いていたので、あれだけの大家にもこんな焦燥に満ちた青春があったのか、とデバガメ根性丸出して読んでしまった。
孤独な文学の宇宙を探索するための「同志」を得たよろこびだけを宿して、まっすぐ小林を慕う中也。でも、小林は中也を心から「同志」と呼ぶことができない。中也と出会ってはじめて知った「嫉妬」という感情が、小林を蝕んでいく。
同じ文学を志すもの同士、手に手をとって進んでいけたらよかったんだろうけど…ときに「絶望」は「希望」より大きな原動力にもなりうるところがまた、たちが悪い。中也と出会って味わったこの挫折こそが、評論家小林秀雄を生むことになるのだろう。
才能を持つもの同士の相克関係ってやつは、恋にも似てなんとも苛烈。次巻では中也の情人・泰子との痴情のもつれもおおいに絡んできそうだが、中也のかなしみを汚すのはぜひ、小林そのひとであってほしい所存。

兄弟ですが、他人です。

兄弟ですが、他人です。 (Charaコミックス)

ツンデレエリート官僚の義弟・シュンスケ×売れない舞台役者の天使兄・タクミ。
家庭の事情で離れて暮らすようになってからも兄一筋だったシュンスケは、十年ぶりにめぐってきた同居のチャンスに我慢も限界。今度こそ兄さんを守る！と意気込むが、タクミにも何やら思惑があるようで…。
兄への片想いをこじらせすぎて中二病なシュンスケが、ほんっと残念なイケメン！
せっかくの計画性と遂行力を、すべて兄ちゃんのためだけにつぎこんでいるという。いくらエリートといえど、ここまでこじらせては婿の貰い手もないだろうから、タクミは末永く幸せにしてあげてくれ。
同時収録の「鍵のかからない檻」は魔性の美少年モデルと、彼を描くたび欲情してしまう自分に罪悪感を抱く育ての親の倒錯愛。

ラブラド・レッセンス

ラブラド・レッセンス (H&C Comics ihr HertZシリーズ)

カバーのカラーイラストがめちゃくちゃキレイ！
この繊細なグラデーションを再現するの大変だっただろうな〜。蛍光グリーンを使ってるんだろうか？緑って印刷で出すのが難しいのに、ふわっと空気感のある色味になっててすごい。
手首を骨折した写真家と、同い年の担当医。それなりに「一人前」にはなったものの、胸にわだかまりを抱えていたふたり。べつべつの世界で生きているはずが、お互いに仕事に一途な者同士、ともに過ごす時間はふしぎと心地よく奇妙な友人関係がはじまる。
最初はぎこちなくだんだんと大胆に、しっかり受け止めてはまっすぐ投げ返す、キャッチボールみたいなふたりのやりとり。感情にまかせることなく、丁寧に信頼を結んでいくところが逆に新鮮。BLっていうにはやや弱いけど、たまにはこういうブロマンスっぽいのもいいですね。

つま先から愛されて

つま先から愛されて(BLシリーズ 435) (ダイトコミックス)

足フェチ年下攻め×淫乱純情襲い受け。
脚線美のほうの「脚」じゃなくて、足裏や指を含む「足」フェチってところが変態度高い。堅物な子犬をちょっとからかっただけのつもりが、とんだ狼に豹変させてしまって戸惑う受けがかわいかった。受けにだけ変態な堅物攻め最高や！

好きやっちゅうねん！

好きやっちゅうねん! (H&C Comics ihr HertZシリーズ)

夏休みを目前に、念願の彼女ができて浮かれまくりの陽斗。ところが、よろこんでくれると思っていた幼なじみの桂吾はなんだか不機嫌な態度。先を越されてうらやましいのか？なんて思っていたら、陽斗は突然桂吾からキスをされてしまう。
高校生の恋と花火大会はテッパンの組み合わせだな〜。全体にもうちょっとひねりがほしい感じではあったけど、かわいかった。

トモダチ以上のこと、シたい。

トモダチ以上のこと、シたい。 (バンブーコミックス moment)

幼なじみで同居人の原と菅。表向きは友だち同士のふたりが、水面下では互いへの劣情を押し隠して、必死に我慢大会してるところが大変萌え。やせ我慢最高です。
ただ、シチュエーションはカンペキなわりに、そこまで萌えなかったのは攻めの変態度が足りなかったからか？（←完全なる趣味嗜好の問題！）倉橋さんの漫画はキレイでかわいいんだけど、自分にはややキレイすぎて食い足りないんだよな〜。キャラクターにもう少しなまなましさがほしい。

同人作家コレクション タカツキ

同人作家コレクション（182）タカツキ (POE BACKS)

この間のイベントで読んだ本がよかったので、さっそく密林から取り寄せた！
どのお話も丁寧に行間を埋めてくれるものばかりで、キャラクターへの愛情をひしひしと感じた…。恋したその先にある未来まで感じさせてくれるすばらしい黄笠。ありがとうございます。