パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

御曹司の口説き方

御曹司の口説き方 (ビーボーイノベルズ)

御曹司の口説き方 (ビーボーイノベルズ)

「共同戦線〜」といい、鳩村さんのライバルものはいつも私のどストライク。
ひとりの想い人をめぐって、二十年来の犬猿の仲である鷹藪千里と宝生虎之助。千里は戦国時代から続く由緒正しい名家の当主。対する虎之介は、天文学的資産を有する大企業の跡取りだ。同じ御曹司同士ながら、二人のバックグラウンドは正反対。私はこの、零落貴族と成り上がり豪族のとりあわせが大好きなのだ。
異なる価値観のもとに生きる二人は当然ぶつかりあう。そしてその一方で、互いの欠けた部分を補い合うかのように惹かれあっていく。千里は、商才ひとつでなりふり構わずトップに上りつめた宝生の血筋を受け継ぐ虎之介の型破りな行動力や自由な発想に憧れ、虎之介は、一介のサラリーマンとなってなお武家の誇りを忘れず、ノブレスオブリージを体現するかのような千里の気高い魂を手に入れたいと思うようになる。
虎之介と千里、二人のキャラクターにほんとうの意味での「育ちのよさ」が滲んでいて、読んでいて気持ちよかった。
ツンデレなようで、千里には自分が悪かったと思えば心から謝ることのできる素直さがある。金に糸目をつけないお殿様みたいだけど、虎之介はちゃんと、本当に大切なものは金で買えないことを知っている。バラ撒くだけのヤンエグにはない「持てる者」の魅力が満載だ。とても面白かった!