パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

これで君と同じ夏

アマゾンではアダルト指定。高校生同士の「ときめきセンチメンタルラブ」なのに!
呉服屋の跡取り息子・一馬と魚屋の次男坊・哲治は、同じ商店街で育った幼馴染み。しかし、商店街の北と南は長きに渡る商売敵。南の一馬が笑いかけても、北に店を構える哲治は冷たい態度。ばかばかしいいがみ合いなんてやめて仲良くなりたいと願う一馬だが、哲治は頑なで…。商店街のロミジュリストーリー。
子どもらしい意地の張り合いですれ違っていた二人が、ひと夏の経験を経て一歩大人に近づく。この頃の渡海さんのBLは、青春小説としての側面が強い。大人と子どもの間で揺れる年代の、とるに足りない、けれど本人たちにとっては重大な悩みや葛藤を丁寧に掬い上げている。
兄弟にコンプレックスを抱いたり、好きな子にわざとそっけなくしてしまったり、くだらないとうそぶきながらも大人の事情を蹴飛ばせなかったり。あるあるそういうこと、とあまずっぱい気持ちになりながら読了。