パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

竜と龍〜銀の鱗〜

龍と竜 ~銀の鱗~ (ガッシュ文庫)

龍と竜 ~銀の鱗~ (ガッシュ文庫)

「龍と竜」シリーズスピンオフ作。
強面若頭の五郎に、中学生の甥っ子・颯太が猛烈アタック。
必死に背伸びする颯太を大人の男の余裕に溢れた五郎さんがいなしつつ、最後にはいっしょに生きていく決意をする…というスローな展開だったので、ショタは苦手でも違和感なく読めた。
綺月さんの描くヤクザには、三つ揃いのスーツを着ているだけのなんちゃって経済ヤクザとはちがう「任侠」の迫力がある。たとえどんなに愛し合っても、相手を裏切るようなことをすれば容赦なく手にかける残忍さを龍や五郎はつねにまとっている。
それだけに、本来ならBL的ハッピーエンドといえる龍と竜城の「養子縁組」のやりとりは、ぴりっとスリリングなものになっていた。龍と籍を入れるということは、自分も組の人間になるということ。ともに暮らし、龍自身が決して悪い人間じゃないということを知っても、愛のためにすべてを受け入れることのできない竜城は、けして薄情なのではなく、いたってまっとうなカタギだと思います。
自分の生殺与奪の握る相手から捧げられる愛の言葉ってのは、なかなかに恐ろしいものである。でも、龍の生きる世界はあくまで殺伐としたものとして描かれているからこそ、竜城や颯太との暮らしがひときわあたたかなものに感じられるのだろうな。
竜城と颯太のすれちがいながらもつねに互いを思いやっている兄弟愛にじーんときてしまった。