パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

馬鹿で愚図は大嫌い

馬鹿で愚図は大嫌い (H&C Comics  ihr HertZシリーズ 163)

馬鹿で愚図は大嫌い (H&C Comics ihr HertZシリーズ 163)

なんてインパクトのある表紙。
BL表紙は受け攻めセットが基本だけど、最近ではどちらか片方だけが描かれることもずいぶん増えてきた。ピンの表紙は顔がどアップで描かれることが多く、迫力がありますね。しかも泣き顔とくれば、「いったいどうして?」と興味がそそられる。
幼い頃から、兄の親友である蒼大を一途に慕ってきた春。傍若無人の兄とはちがい、いつも優しく春の手を牽いてくれた蒼大のあとを追うように同じ高校に進学し、蒼大のハイジャンプに憧れて陸上部に入った。高校卒業後、蒼大が陸上を辞めて離れていってしまってからも、春は蒼大のことが忘れられなかった。
目標を見失い、誘われるまま上京してモデルになった春の前に再び蒼大が現れる。彼の口が告げたのは、再会をよろこぶ言葉ではなく、長年溜めこんでいた春への鬱屈した感情だった。
誰もが羨むクールなイケメンなのに、そのハイスペックさゆえに蒼大に疎まれてしまう春。見た目はどんなに上等でも、中身はまるで置いてけぼりにされた子どもでしかない。誰にちやほやされたって、蒼大しか目に入らない忠犬っぷりがかわいそうでいとおしい。
春はいたって無邪気で一途なだけに、あっという間に追い抜かされてしまった蒼大としては心穏やかではいられなかっただろう。いくらかわいがっていたといえど男同士。年下に負けたくないし、兄貴分としてかっこつけていたい。「好き」だけじゃうまくいかない、男同士の「嫉妬」にリアリティがある。