君子蘭
- 作者: 江上冴子,杉本亜未
- 出版社/メーカー: 青磁ビブロス
- 発売日: 1994/10
- メディア: 新書
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この時代の若者の「学びたい」という想いは、ほとんどの人間が大学を出る時代に生きる私たちには想像できないほどに熱烈なものだったんだろう。頬を染める恋心とはまたべつの、手の届かぬものへの痛烈な「憧れ」が刻まれている。
あとがきに、戦前の旧制高校を舞台にした文豪小説を読みあさったすえ、好きが高じて書いた作品、というような解説がついているのだけど、文章にもストーリーにも色濃くその影響がうかがえる。BLの匂いはほとんどなく、むしろサナトリウム文学という感じ。
リブレの元祖にあたる青磁ビブロスから出た本なので、ボーイズラブ黎明期の一冊。
BL初期の作品ってほんとうになんでもありというか、ストイックなプラトニックラブもあれば、「なんじゃこりゃ!」と吹き出してしまうトンキワ作まで、なにが飛び出すかわからない無法地帯っぷり。いまとなっては商業じゃ出せないだろう、と読者ですら思うほど個性的な作品ばかりである。
玉石混交だけど、強烈な初期衝動がこもった本ばかりでおもしろい。