パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

慈雨

慈雨 (幻冬舎ルチル文庫)

慈雨 (幻冬舎ルチル文庫)

再読。「淡雪」のあとに「雨」シリーズを読むと、やっぱり加賀と那智は大人だなあと感じる。
武川は祐真に子ども扱いされたくないという見栄があるせいで、へんな意地を張って祐真を悩ませる。
加賀はときには嫉妬や自分の弱さすら、那智の前で包み隠さずさらけ出してしまう。いい歳して子どもっぽくも見えるけど、相手の前でありのままの自分でいるのは、かっこうつけてみせるよりずっと難しい。

何度読んでも、本編のラスト、加賀と那智と隆世がぎゅっと抱き合うシーンでは目頭が熱くなる。よるべない子どもだった三人が孤独を持ち寄って、彼らだけの家族を作った。人と人を結びつけるものはやっぱりお金でも血でもなく、愛なのだ。

「花雪」のあとがきによると次作では隆世のおはなしを、とのこと。太陽みたいに明るく四人を照らしてきた隆世は、いったいどんな人と恋に落ちるのか。「花雪」では、「最強の男前」を目指し、語学や武道、料理に至るまで日々研鑽を積む超有望株なスーパー中学生に成長していただけに、すっごく楽しみ。