パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

そうか、もう君はいないのか

そうか、もう君はいないのか

そうか、もう君はいないのか

このタイトルだけで泣けてきてしまう。
経済小説の大家が最後に残した作品は、最愛の妻へのラブレターだった。
どこへいくにも妻を伴った夫(それこそ、もういない妻に語りかけてしまうほどに)と、どんなときもひたむきに夫を信じ続けた妻。新婚のころの読んでいるほうが照れてしまうアツアツっぷりからしずかに満ち足りた晩年まで、とにかく愛にあふれた日々がつづられていた。
なかでも、奥さんが癌告知を受けた際のエピソードは、涙なしには読めない。
死と向き合うときすら笑顔とユーモアを忘れなかった妻。そんな健気な妻の不安と苦しみをまるごと抱きしめようとした夫。
あらがえぬ理不尽にさらされてなお精一杯運命を受け止めようとする夫婦の姿に、愛のもつ力の大きさを教えられた気がした。