パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

乙嫁語り 7

新刊を読むたびに「すばらしい…」という以上の言葉が出てこない。
物語の舞台は、新天地・ペルシアへ。イスラムの戒律によって、夫以外の男性の前に顔を出さない女性たちは、「姉妹妻」といわれる乙嫁同士の絆を持つ。
まさかの百合展開に大興奮!いつもの生命力にみなぎった描線を見事に少女漫画らしい優美な線へとチューニングして紡がれる、女性たちの園。さだめのままに妻となり母となったアニスは、美しいシーリーンと出会ってはじめて、恋にも似たときめきを知る。
一夫多妻制の世界というのは、私たちにとっては想像しがたいものがあるけれど、恋を知ったことで、アニスがあらためて、自分をひたむきに愛してくれていた夫への愛を認識する展開がよかった。やはりただ享受しているだけじゃ、ひとは幸福に気づけないものなのだろう。
邦人が標的とされるテロによって、「イスラム」はこわいという風潮が広まりつつあるけれど、おそろしいのは「テロ組織」であって、イスラム教徒ではない。多くのイスラムの人びとは、彼らと同じように、つつましく篤実に生きているんだということを忘れずにいたい。