パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

恋する男はいつも傲慢

鳩村さんのお仕事ものにハズレなし!
随所にキラリと光る薀蓄やエピソードを散りばめながら、すっきりコンパクトにまとめている。がっつり濃いメロドラマを披露したかと思えば、つるつる入るラブコメもさらりと書いてしまうあたり、ますます脂が乗ってるなあと感じ入る。
舞台は青山にある広告代理店。31歳にして独立したやり手の若社長の元に、武者修行へ出された箱入り息子の成長物語。
それはただ金にものを云わせてるだけでしょーが!と喝をいれたくなるエセエリートがゴロゴロするなかで、鳩村さんの「デキる男」にはこういう人のもとで働いてみたいな、と思わせる魅力がある。
働くよろこびを知らない御曹司の隼人は、独自のライフスタイルと職業倫理を備えた友定に憧れ、やがて憧れが恋へと発展していく。ストーリーとしてはルビーらしい王道なんだけど、しっかり書き込まれた背景がありきたりと思わせない。ただ忙しく労働するだけじゃなくて、仕事のやりがいを感じさせてくれるのが、鳩村さんのお仕事BLの魅力。
クリエイティブな現場で苦心惨憺しながらも、登場人物たちが存分に楽しんで働いているのが伝わってきた。
思わず自分も、もうちょっとがんばってみよっかな、と前向きな気持ちになれるところがまた爽快。