パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

ファンシイダンス 8-9

ファンシイダンス 9 (プチフラワーコミックス)

ファンシイダンス 9 (プチフラワーコミックス)

陽平、俗世へ還る。
上山してからぐっとおもしろくなった本シリーズ。しかし、所詮陽平の本質は根無し草。
修行僧として3年目の冬を迎え、新入りの指導も任される立場になった。新入り時代には、いつか俺たちもあのえらそうな古参みたいに新参者にに喝を入れてやるんだ!と歯軋りしていたはずが、やっぱり彼は、他人を押さえつけ従わせるよりも、規制や秩序をかき回すことに喜びを見出すタイプだ。つかみどころのない笑顔の裏には、筋金入りの反骨精神が潜んでいる。
最後まで人を喰ったようなすちゃらかぶりで、陽平はあっさりと山を下っていく。
何ものにもこだわらず、何ものにもしばられず。しかし、冷徹にもなりきれず、年寄りと女の子にはめっぽう弱い。
したたかにしなやかに、そして繊細に。真面目や一生懸命なんて言葉を尻目に、軽やかなステップであっちこっちへくるくる逸脱しながら進む若者たちの「きまぐれなダンス」は、この先も続いていく。