パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

思い出を切りぬくとき

思い出を切りぬくとき (河出文庫)

思い出を切りぬくとき (河出文庫)

萩尾望都のエッセイ集。
あれだけおもしろい漫画を描く人の文章なのだから、当然のようにおもしろい。あんなにすごい漫画家さんなのに、ちっとも気どった感じがないのがまたすごい。
バレエを観劇するためひょいとブリュッセルへ飛んだかと思えば、紅茶に砂糖を入れる・入れないで友人と喧嘩する。驚くべきフットワークの軽さと、瑞々しい感性と、小市民根性とが違和感なく共存している。
萩尾先生の言葉は、素直でとてもわかりやすい。それでいて、書いてある内容はとても鋭く、深いのだ。
イラストや構想ノートの一部が本文中に挿入されていて、それがまたいちいち素晴らしく興味深い。ファンにとっては垂涎の一冊。