パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

深呼吸

深呼吸 (ビーボーイノベルズ)

深呼吸 (ビーボーイノベルズ)

リストラの憂き目に遭い、四十路過ぎにして弁当屋でバイトを始めた主人公。みじめさに打ちひしがれながらも自分なりに再出発を切ろうとしていた矢先、自分をリストラした張本人である年下の上司がバイト先である弁当屋に通いつめてくるようになる。
二度と顔を合わせたくない相手だったはずなのに、偶然が積み重なるうち、ともに過ごす時間を心地よく感じるようになり…。
運命的な出来事も、衝撃的な事件もない、平凡な日常のなかで生まれた恋の話。湖に投込んだ小石がやがて湖面全体に漣を広げてゆくように、読み進めるほどにじわじわ染みてくる。
冷徹で融通の利かない合理主義者だった上司が、恋におちてぐずぐずになってく様子がかわいくって身悶えした。