パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

期限切れの初恋

期限切れの初恋 (ビーボーイノベルズ)

期限切れの初恋 (ビーボーイノベルズ)

かつて恋していた大学時代のヒーローは、パチンコに溺れるろくでなしになっていた。学生時代の想うだけの片想いを捨てきれない主人公は、幻滅し、嫌いになるためだけに、ゴミのような男を拾う。あきらめたいのにあきらめきれない。かといって、報われることもない。ただ苦しいばかりの恋の話。
拾ってもらった恩義で受けを愛そうとする攻めの、無意識の残酷さや傲慢さに心がささくれ立つ。
この「いや〜な感じ」こそが木原作品の凄みだと思う。
痛いやつらいやかわいそうなんて、とりつくろった言葉じゃ足りない。だって、この残酷さも傲慢さも、身に覚えがある。
主人公たちのみならず、本の向こうの読者すらも無実の被害者にはしてくれない。
「あなただって、同じだろう」。
そう言われているような気がして、目がそらせない。