パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

涼子さんの言うことには

涼子さんの言うことには (KCデラックス Kiss)

涼子さんの言うことには (KCデラックス Kiss)

北海道の大自然のなか、のびのびと育つルミとマヤの姉妹。ヤマザキマリの少女時代をもとに描かれた自伝的作品。
女手一つでふたりを育てた母・涼子さんの、直感的子育て法に感心させられる。英語もろくにしゃべれない14歳の娘をヨーロッパに送り出すなんて、お母さんだって不安で仕方なかったことだろう。しかも時代は昭和。いまのように簡単に世界中で通信できるネットワークもなかったころの話。
でたらめなようで、子どもをちゃんと信じて、尊重していないとできないことだ。
強烈な個性を持つヨーロッパの人々にもまれながらも、持ち前の明るさとなけなしの勇気でなんとか前へ進んでいくルミの姿に感動。たとえ言葉が通じなくても、一生懸命伝えようとすれば通じるものはあるんだな。
ヤマザキさんの漫画がほんとうの意味で「豊か」なのは、涼子さんがしっかり娘たちに愛情を注いだおかげなのだろう。
そして…この漫画のあとがきを読むと、つくづく作者がテルマエフィーバーに翻弄されていたことがわかる。笑
売れる漫画=いい漫画ではないけれど、売れる漫画がないことにはいい漫画が作れないこともまた真実。だからこそ、これは!と見込んだ作品は徹底的に売りまくるのが出版社の使命。でも、広告塔となった漫画の作者としては、苦労も大きいことだろう。ヤマザキさんみたく、思わぬところから火がついた人ならなおさら。
いまはいくらか落ち着いて漫画家できていたらいいな。