パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

in August

in August (マーブルコミックス)

in August (マーブルコミックス)

わ〜、このカラーの塗り方、すき!
カラートーンっぽい平面塗りが90年代をほうふつとさせるなぁ。
セル画風のアニメっぽい質感が出せるのもあって、上条淳士とか森生まさみとか、いろんな作家さんがカラートーンを使ってた時期があったんですよね。デジタルが主流になってからは、あえてこんな平面的な塗り方する人もいなくなったので(アニメ自体がセル画じゃなくなったしね)、すごく懐かしい気持ちになった。
肝心の本編も、恋することのままならなさがぎゅっと詰まったせつないラブストーリー。
なんだろう、デビュー作にもかかわらず、読んでいるとどこかノスタルジックな気持ちにさせられた。学生時代特有の、果てしなく長い夏休みの空気が真空パックされているような。
やるべきこともやりたいこともわからないけど、考える時間だけはいくらでもある。答えを宙に浮かせたまま、ただ「いま」という時間を浪費していた。そうだ、ここに描かれているのは「モラトリアム」そのものだ。
自分はいったい何者なのか、相手が何を想っているのか。核心に触れるのを怖れながらも、一歩を踏み出そうとする臆病な若者たちの姿に、いつかの夏の日がよみがえった。