パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

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HOME (Holly NOVELS)

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好きだった男の子どもを育てるという定番の疑似家族設定も、木原音瀬の手にかかれば心温まるホームドラマから、密室サスペンスへと変貌する。
愛した男の遺伝子の欠片を手元に置きたいと願った篤のエゴ、愛されるためには自分が自分である証すら捨て去った直己の狂気。
「誰かのために」とか「おまえが心配で」などというおためごかしの言い訳は、ことごとく粉砕されてゆく。寂しさに打ち震え、おまえにわかるかと泣き喚き、同情なんていらないと殴りつける。自らの手ですべてをめちゃくちゃにしておきながら、その残骸を抱きしめてまた泣く。
傲慢で卑小な、剥き出しの人間の姿がここにある。