パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

アオイホノオ 14

サンデーの新人漫画大賞で佳作を受賞したホノオ!漫画家への足掛かりを経て浮かれまくりのホノオだが、あくまでこれはスタートラインであって、ゴールではない。
いまいち祝ってくれない仲間たち!さっそく差をつけられたライバル!一切褒めてくれない担当!キビシイ現実の荒波が、若者のささやかな全能感に冷や水を浴びせかけまくる!!
ついに栄光のサクセスストーリーのスタートか!?と思ったのもつかの間。高くなりかけたホノオの鼻をことごとくへし折る「上げて落とす」切れ味バツグンの展開に、14巻も笑い転げっぱなし。
「デビュー作をライフワークにする!」と宣言して100話分のサブタイトルをつくったり(そんなことしてるなら読み切りの1本でも仕上げろ!)、同い年というだけですでにゴールデンタイムでアニメを放送している手塚眞氏をライバル視したり、相変わらず若気の至りが暴走しているホノオだが、この先彼はこのアツすぎる情熱だけを武器に現実をぶち破っていくんだから、バカの力はバカにできない。
受賞するなり担当編集者が変更になり、早くも前途多難なホノオ。鳴り物入りのデビューとはなりそうもないが、果たしてどんな試練が待ち受けているのか。

わっちゃんはふうりん

サメマチオとしては初めての時代もの漫画。別名義で描いていた江戸ものBLがよかったので、こちらも楽しみにしていました。
片足を失くして若隠居の稲造。稲造に変わって薬問屋を継いだ妾腹の弟・八衛。八衛が身請けし、稲造の住む家に女中として預けられたりよ。おだやかな日々のうちに愛憎を忍ばせた三人の男女の、奇妙な同居生活。
誰にだって口には出せない妬みや、忘れられない苦しみがある。どんなに望んでも、自分は自分にしかなれない。生きていくうえで誰もが避けがたいかなしみを、おおらかなユーモアとのびやかな絵で包み込んで描いている。
三人のうちの誰かを悪者にするのではなく、三者三様の孤独としあわせに寄り添った物語に心ふるわされた。