パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

ファンシイダンス 4-7

ロックも愛しの真朱(まそほ)さんも振り捨てて、ついに陽平お山へ上る。
俗世から遠く離れた山奥の禅寺で、恐怖の坊主修行が始まる。スチャラカ男もこれで少しは悔い改めるか…と思いきや、陽平のおふざけはますますエスカレート。
居眠り、つまみ食いはお手のもの。先輩僧の目を盗んでお山を抜け出し、見学に来た女子高生と記念写真を撮り、食えない老師との化かしあいに血道を上げる。
この男、どんな異常事態もおもしろがってしまうのだ。
一方でどんなバカ騒ぎの最中もどこか醒めている陽平の、どこかあやうい欠落感も浮かび上がってくる。
非凡な画力で紡ぎだされる、寺院の清浄でありながら一種異様な空気には、圧倒されるものがある。7巻の法戦式は、このシリーズのひとつのクライマックスといえよう。
首座となった陽平が、寺の修行僧たちと禅問答を戦わせる。台詞のほとんどは漢文読み下しの「問答」だけ。説明は最小限、モノローグもなし、というじつにストイックな表現で、問答の正確な内容などはっきりいってちんぷんかんぷん。
でも、このやりとりがものすごく凛として恰好いいんだ。
いつもふざけてばかりで、本気を見せることを殊更厭う陽平の「逸脱し続ける覚悟」を垣間見た気がした。