月に笑う 上・下
- 作者: 木原音瀬,梨とりこ
- 出版社/メーカー: リブレ出版
- 発売日: 2009/12/18
- メディア: 単行本
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- 作者: 木原音瀬,梨とりこ
- 出版社/メーカー: リブレ出版
- 発売日: 2009/12/18
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上巻で、路彦が田渕刑事に啖呵をきるシーン。何度読んでもはげしく揺さぶられる思いがする。
飢えることも凍えることもなく、欲しいものが買える何一つ不自由のない暮らしをしていても、心が死ぬことはあるのだ。
下ネタ連発のチンピラといじめられっこのモヤシ少年の、コントみたいなロードムービーで笑わせておいて、思わぬところから鋭く心に切り込んでくる。これだから木原音瀬は油断できない。
いつ何時も「信二さん至上主義」な路彦のうぶな恋心が、だんだんとおそろしくなってくるところが醍醐味。退路を絶った状況で「ひとりで死ぬか」「いっしょに生きるか」の選択を迫るところなんて、冷静に考えたらホラーだよ、これ。
誰かを自分のものにしたい、という叶わぬ願いは、ときにひとを修羅に変える。
愛することの美しさと、奪ってでも手に入れたがる欲望の醜さ。そのふたつをうまく調和させるのではなく、交じり合わぬまま同居させているところに、いつも圧倒される。