パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

百貨店恋愛事情

百貨店恋愛事情 (角川ルビー文庫)

百貨店恋愛事情 (角川ルビー文庫)

1冊よい本に当たると、その作家の既刊をひと通り遡らないと気がすまない。
海賀卓子&宇宮有芽祭り絶賛開催中。両者ともすんごい好みど真ん中で、楽しくって仕方ないっす。
作者お得意の、どこにでもいそうな普通の人がゆっくり距離を縮めて恋愛するお話。じれったい駆け引きに悶えます。
立山百貨店の宝飾フロアでともに店長を務める鳥井と城嶋は、同僚でありライバル。たった2歳年上とは思えない貫禄と余裕を見せつける城島に、反感を抱いていた鳥井だが、彼のさりげない気遣いや思いやりに触れ、徐々に尊敬だけじゃない感情を抱き始める。
鳥井に甘えて欲しい城島と、対等でいたいから城島に寄りかかるまいとする鳥井の追いかけっこ。やっぱり、男はちやほやされて喜んでいるようじゃいかんよね。
「帰さない、って言ったらドキドキするか?」って、城島さん、何でここで質問なんだ!男同士の関係に腰が引けている鳥井に逃げ道を残してあげる余裕と、強引になりきれない大人の純情にノックアウトされた。
貴金属売り場でのお仕事もとても丁寧に書き込まれている。夜道を車で送ってもらったり、祭事の出張で同室になったり、レストルームに連れ込まれたり、すわオフィスラブアフェアか!というおいしいシチュエーション満載ながらも、職場ではあくまで節度をわきまえているところに好感がもてる。
いつも真面目に働いてる同僚たちがこっそり目配せしあってるのをみてしまったような、覗き見的な楽しさがある。いい大人がなにを…!とかわいらしさに腹が立ちます。