パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

スタンダード・レビュー

スタンダード・レヴュー (ショコラノベルス)

スタンダード・レヴュー (ショコラノベルス)

「恋愛革命」「メイプルシロップ・パンケーキ」と読み進めて、三冊目の海賀卓子さんの本。三冊目にして、これはすごい宝物を見つけたぞ、と確信する。
母親を見捨てた父との確執を抱え、自暴自棄な暮らしをおくる高校生の悦司。彼の家庭教師を依頼された悟は、嫌々ながらも破格のバイト料につられて、問題児の面倒を引き受ける。
二人が打ち解けるきっかけとなった古い洋画の数々が、場面場面でとても印象的に引用される。海賀さんは、小道具やエピソードの使い方がすごく上手いなあ。悦司が悟に送ったハンドクリームとか、ドア越しのキスとか、悟が曇りガラスに書いた文字とか。何気ないエピソードのひとつひとつに涙腺がゆるみっぱなしだった。
物語を締めくくった一文が見事。始まりと終わりがくるりと繋がって、物語をさらに未来へと解き放っている。